快走している瞬間

 Powertapを使い始めてはや9ヶ月。メーターにパワー値が出てくるのもなんと言うことない普通のことになったが、そこで1つ、メーターが高い平均出力を示すようになる走り方と言うものに気が付いた。

 それは「脚がなんか少し楽になったな、と思ったらすかさず1段シフトアップする」と言うことだ。

 スポーツ自転車に長く乗っている人なら1度や2度は経験するであろう、自転車にはこの上なく心地よい「快走している瞬間」というものが存在する。軽く踏んでいるのになんかすごくスピードが出て気持ちいい〜〜という瞬間だ。
・・・が、パワーはそこで落ちている(笑)。

 その「快走している瞬間」と言うのは、大抵微妙な下り坂であるとか、微妙な追い風であるとか、自分以外の外的要因によってパワーアシストされている状態だ。トレーニング効果を期待するならここで更に踏み込まなければならないことは頭では分かっている。・・・で、実際自分は踏み込んでいるつもりでもいた。

 しかしパワーメーターは冷静に冷酷に「ホラホラ、おまえここで力抜いてるじゃん、何してんの?」と突っ込みを入れてくる。

 無風の平坦路をずっと走っていると、ケイデンスはそのライダーに一番合った一定の値に落ち着いてくる。そこから緩い下りや若干の追い風状態に移行した場合、多少脚が楽になったからと言ってもケイデンスを上げてパワーを維持するというのは実はなかなかやりにくいのだ。なので、パワーを維持するにはシフトアップだ。シフトアップした分ケイデンスは下がるが、身体はこれまでと同じケイデンスで回そうとするのでそちらの方がパワーは出る。
 と言ってもある程度速いスピード域で走っている場合、スピードに差が出るほどのパワー向上があるかと言えばそれは微妙。レース中の駆け引きなら脚を休める選択肢も当然ありだ。しかし負荷トレーニングであればトレーニングの質は確実に向上する。今まで無意識に休んでいたところを休まなくなるのだから。

 快走している瞬間と言うのは、自転車に乗っていて非常に気分のいい楽しい瞬間なのだが、質の高い負荷トレーニングにはそういう瞬間はあってはならないのだ。負荷トレーニングは厳しい世界だ。