リカダンシング

リカンベントはその構造上ダンシング(立ち漕ぎ)することが出来ない

これはリカンベント悲しき宿命であり、発進・加速・登坂といった場面でのリカンベントの弱点の1つとなっているのだが、この弱点を補うテクニックがリカダンシング*1だ。エネルギーに対する出力の効率は悪くなるが、一時的により大きなトルクが必要な時に使いこなせると便利。私が使っているのは主に以下の2パターン。

  1. typeI。腰の位置を通常の位置から少し後方にずらし、シートに腰から尻の辺りを押しつけてペダルをぐいぐい押しつけるように踏む。膝はペダルが下死点にある時ほぼ伸びきった状態。上半身はシートからやや起きた姿勢になり、腰を後にずらした分シートに沿って腰の位置が高くなるため、頭の位置も上がる。使う筋肉は主に太腿の表側。
  2. typeII。頭をヘッドレストに預け、肩甲骨のあたりをシートに押しつけて体を浮かすようにペダルに体重をかける。使う筋肉は主に背筋と脚の裏側の筋肉。視線はほとんど空に向いている感じ。

typeIは主に0発進で使用。レースなどでは低速コーナーの脱出時、短い登り、登り終わりの加速時などでも使う。太腿は疲れるし、膝の負担も増えるがトルクは稼げる。体が起きて頭の位置が上がり空力が悪くなるので、使うのは大体25km/h以内のスピード域にある時。それ以上のスピード域に達したら通常のポジションに戻して走る。リカンベントは空力的に優れているので、スピードはさっさと上げて素早く空力的においしいスピード域に持って行った方がよりその特性が生きるのだ。
街乗りなどではちょくちょく0発進しなければならないが、2輪のリカンベントの場合このtypeIを使うことで0発進時のふらつきもある程度抑制できる。レースなどでは目一杯踏むが、街乗りだったらちょっと腰を後にずらして軽く踏み込むだけでもだいぶ違う。

typeIIは長い登りで脚が売り切れてきたとき、もしくは登りの途中に一時的に更にきつい登りが出てきたときなどに使用する。脚はもうこれ以上回らないけどトルクは維持したい、そのような時に背筋を利用してなんとかトルクを稼ぐ方法。
正直、本当にトルクが稼げているかどうかは微妙だ。ただ少し太腿前面の筋肉を休ませることが出来るような感じはある(その代わりに背筋が疲れる)。
ちなみにずっとやってるとめちゃめちゃ疲れるのでここぞと言うときだけに使う。

typeItypeIIともエネルギーに対する出力効率は悪くなるので、多用は禁物。しかしこれはアップライト自転車で行う普通のダンシングにおいても同じことだ。

きっと長くリカンベントに乗ってこられた方なら無意識のうちにこのような走り方を実践しているのではないかと思う。やったことがないのなら試してみるよろし。言葉の説明だけではよく分からないかも知れないが、取り敢えずシートの上でごそごそ動いてより良く前に進む漕ぎ方を色々試してみれば良い。
リカンベントは車種やセッティングによってシートの形状も角度も違ってくるので、上記typeItypeIIが全てのリカンベントに適用できるかどうかは分からない。同じようにやっても違った結果になるかも知れない。それぞれの車種に合ったリカダンシングがあると思う。

*1:私が勝手に命名オーソライズされた言葉でもトラディショナルな言葉でもないので注意