TSUNAMIカーボンケブラーシート

PERFORMERがリリースするカーボンケブラー複合素材製のシート。
PERFORMERのレーシング魂を感じさせる一品。


先日取り付けが完了し、本日初の試走に出た。
取り付けに際しては位置を合わせて穴を開け、以前付いていたGFRPシート(以下FRPシートと記述)の金具を流用してすんなり・・・いくかと考えていたのだが、金具を取り付ける部分の反りがFRPシートとは違っていて、ゴム板をシートの反りに合わせて自分で削りボルト周辺の補強対策を行うなど少々手間取った。補強対策などしなくても走ることは出来そうだったが、多分シートの寿命は縮む。この手の素材は力の集中に対してはあまり強くない。

重量は写真の状態で968g(取り付けのための金具含む。ヘッドレスト除く)で、穴開きFRPシートより420gほど軽い。ちなみに金具を除くシート単体では764g。

形状はFRPシートに対して全長はあまり変わらないものの左右は幾分細めで、実際にシートにもたれてみると特に横に太い体型というわけでもない私でも結構左右に体がはみ出す。これは多分レースのことしか考えていないんだろう。「背中を支えるものがあればいいんだろ?」的レーシング思考だ。その割にめっちゃ軽いと言えるほど軽くはないが*1、それでもこれまでのFRPシートに比べればだいぶ軽い。

まだ1回10km程度走っただけだが第1印象としては、

  1. 剛性感はFRPシートより上と感じる。これはちょっと意外。ただ今日はシートクッションも初めてAIRMESH*2を1層にしての走りだったので、本当にシートの剛性が高いのかどうかはこれまで使っていたAIRMESH2層のシートクッションで乗ってみてから判断するべきところだ。ただ、今日走った限り剛性不足による不安はまるで感じなかった。
    ちなみにAIRMESHシートは現在はTW-BENTS*3が販売しており、PERFORMERのシートには付いてこない。
  2. ハンドリングに対する車体の反応がFRPシートの時より良い。わざと連続で左右に急ハンドルを切ってみたりすると分かるのだが、ハンドルを切る度にシートは左右にぶんぶん振られている。その振られる部分の重量が軽くなったことがそのような印象につながっていると思われる。これはRの小さいコーナーが左右に連続するような場面などで大きな差になってくるだろう。FRPシートに比べコーナーへの進入姿勢を早く作れるので、今日は以前よりコーナリングが得意になったように感じた。ロードバイクと比べるとTSUNAMIコーナリングはまだまだ弱いので、この点が改善されるのには非常に意味がある。
  3. 私が勝手に命名しているところのリカダンシング*4以前よりやりにくくなった。腰を後ろに滑らそうとすると微妙に膨らんでいるシート中央の左右のせり出しが引っかかる感じ。逆に背骨のS字に対するフィット感は前のFRPシートより良いよう。もっともこれは個人差のあることとは思う。
  4. シート形状が変わったのでブームの突き出しを調整する必要があるかと思ったが、今日走った限りでは特にその必要性は感じなかった。しかし長距離を走ってみるとまた印象は変わるかも知れない。

今日明確に分かった困ったことは、Radical DesignのシートバッグSolo Aeroがうまく取り付かなくなってしまったこと。シートの横幅が細くなったせいである。このバッグはこれまでかなり重宝してきたので使えなくなるのは痛い。これはなんとかしたいところ。
ヘッドレストの高さも変わってしまったが、これはヘッドレストに穴を開け直せば済みそうだ。

このカーボンケブラーシートはどちらかと言えばレース指向の人向けの品であると思う。TW-BENTSの最近のFRPシートを見ると金具が取り付く部分には素材に厚みを持たせるなどして強度を確保している。これは体重が100kgとかある人が乗っても耐えられるようにするためだ。このカーボンケブラーシートも金具が取り付く部分には補強が入っているが、カーボンケブラーの素材を1枚多く重ねた程度のもので、自転車選手体型の人にはOKでも、あまり体重の重い人が乗る場合に十分かどうかはちょっと怪しいと思う(私が思うだけ。実際に壊れたという話を聞いたわけではない。ちなみに私は体重約70kg)。シートの幅が狭いのも長距離ツーリングなどでは何のメリットもない

その代わり剛性があって軽いので、レースには向いている。めっぽう軽く仕上げなかったのは剛性を気にしたからなのでは?とも思ってしまう。大体、フルカーボンではなくケブラーを混ぜて作っている辺りも剛性留意の設計がぷんぷん臭う*5。私としては軽くてヤワよりそちらの方が歓迎だし、あえてそのように設計しているのだとしたらPERFORMERのビルダーは自転車をよく分かっていると思う。

リカンベントのシートは、ロードバイクのサドル以上に重要なパーツだ。乗り心地だけでなく、自転車の剛性の一部も担っているからだ。理想を言えば個人個人の体型に合わせてオーダーメードで作られても良いようなものだと思う。リカンベントレースが今の自転車ロードレースみたいな状況になれば、プロのシートはオーダーメードが当たり前、なんて全然あり得る話だろう。アマチュアのレベルであっても、どこどこのメーカーのシートは何g軽いとか重いとか、剛性があるとかないとか、そんなことでシートを評価する時代が来るかも知れない。

・・・リカンベントの発展の余地はまだまだ大きく残されている。未来が楽しみだ。

*1:リカンベントの本場ヨーロッパのメーカーOPTIMAのカーボンシートは620gとアナウンスされている

*2:シートに被せるシートクッション。中に入れるメッシュ状のクッション材の枚数で乗り心地を変えられる。

*3:台湾のリカンベントメーカー。実際は販売元。以前はRB-Performer(現PERFORMER)のリカンベントを販売していた。その後RB-Performerとは袂を分かち現在に至っているが、今でもシートの形状などはそっくりなリカンベントを販売している

*4:ダンシング(立ち漕ぎ)の出来ないリカンベントの弱点を少しでも補うために私が考えたペダリング方法。腰の位置をシート後方にずらし、シートに腰を押しつける反力でペダルをぐいぐい踏み込むようにペダリングする。エネルギー効率は落ちるが、0スタート時の加速や登りでトルクを稼ぎたいとき有効。TSUNAMI以外のリカンベントで使えるか、他にやっている人がいるかどうかは知らない・・・

*5:強度的には、ガラス繊維<カーボン繊維<ケブラー繊維、なのだそうだ